- 通常、詩は本質的にリズムをもつ行(詩行)から成り、それらの行が韻を踏みながら、いくつかの節(詩節)を構成していく。
- このような特徴によって詩はそのほかの文学形式から区別される。
- 音楽からの分離
- 詩は最古の芸術の一つであり、最も広く普及した芸術の一つでもある。
- もともとは歌として音楽や舞踊と分かちがたいものだったが、しだいに独立した存在になった。
- 現在知られる古代ギリシャの叙事詩、抒情詩、詩劇は、詩が音楽から分かれる過渡期の作品であるが、これらの作品は今日、音楽を伴わない文学として読んでも十分な完成度を示しているという。
- 音楽から分離する過程で詩は、音楽のリズムにかわって、純粋に言葉のみによるリズムを生みだしていった。
- 詩を散文からもっともてっとりばやく区別するのは、このように言葉をリズミカルに用いるという点。
- その後、詩における言葉のリズムがしだいに韻律と呼ばれる規則にまとめられていくと、詩はこの規則に従ってつくられるようになった。
- 詩が韻文とよばれる理由もそこにある。
- 対句法などを用いた旧約聖書の詩編や、古今の多くの文化にみられる口承的な歌謡などは、厳密な意味での韻律を持たないため、伝統的な定義による詩には含まれない。
- しかし、この種の形式には、韻律の規則に従った詩にはない自由で豊かなリズムがあり、自由詩が現れ始めた19世紀(日本-江戸時代後期〜明治時代)から現代に至るまで、詩に新たな可能性をもたらすものとして見直されている。
- 種類
- 一般的に詩は、抒情詩、叙事詩、劇詩の3つに大きく分けることができる。
- 抒情詩
- 小さく凝縮された形式で、個人的な生の経験を、感情的、感覚的要素を強く交(まじ)えながら歌うことにある。
- 叙事詩、そして劇詩
- 大規模な形式をもち、歴史や伝説など、様々な人物の登場する集団的な主題を、雄弁な文体で物語る。
- 中世の西欧で盛んにつくられた物語詩であるバラッドは、抒情詩と叙事詩の中間に位置するものといえる。
- ギリシャ悲劇以来、エリザベス朝のシェークスピアや古典主義のラシーヌにいたるまで、ヨーロッパでは演劇といえば韻文で書かれるものであったが、しだいに散文による演劇が中心になっていった。
- しかし、ジャンルとしての劇詩は今日でも生きている。
- 19世紀以来、現代まで詩の主流は抒情詩となっている。
- 抒情詩の範囲は広く、宗教歌、子守歌、酒宴歌、恋愛歌までをも含む。
- 辛辣(しんらつ)な政治風刺詩や深遠な哲学詩、親密な書簡詩や壮麗なオード、2行のエピグラムや14行のソネット、さりげないロマンスや長大なエレジーなど、内容も形式も様々である。
- 短い散文詩を抒情詩の一種とみなすこともできるという。
- 日本
- 日本には伝統的に短歌、俳句という詩の形式があるが、明治期に入り、西洋詩の形式と精神にならった詩が書かれるようになった。
- これは、いくつかの詩行と詩節からなる西洋詩の形式を日本語に当てはめたもので、当時は短歌や俳句や漢詩と区別して「新体詩」と呼ばれた。
- 新しい詩の形式の移入には、キリスト教の伝播(でんぱ)に伴う讃美歌の翻訳や、森鴎外らによる訳詩集など、翻訳の果(はた)した役割が大きかった。
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