アスベスト
石綿 |
Asbestos
いしわた・せきめん |
- ケイ酸マグネシウムなどの含水ケイ酸塩鉱物からなる天然の無機繊維の総称で、石綿(いしわた、せきめん)ともいう。
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- アスベストのアは「ない」、スベストは「消せる」、つまり「消せない」を意味するギリシャ語からきている。
- 耐火性や耐薬品性、耐摩耗性にすぐれ、建材や工業材料として広く利用されていた。
- 20世紀初頭(日本-明治時代後期)には「奇跡の鉱物」、「天然の贈り物」と呼ばれていた。
- アスベストの繊維を吸引すると、肺に繊維が刺さり機能低下を引き起こすアスベスト肺(石綿肺)や肺癌、肺などの臓器を包む膜にできる悪性中皮腫(ちゅうひしゅ)などを引き起こすことから、現在では使用が禁止されている。
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- 工業物としての特長
- 耐熱性・断熱性や耐火性が高い。
- 酸やアルカリにも強く、腐食せず、化学的にも安定している。
- 摩擦や曲げや引っ張り(抗張力)などに強く、機械的性質が高い。
- 電気絶縁性がある。
- 防音性が高い。
- 柔軟で加工性に優れ、繊維に織り込むことで不燃性の布を作ることができ、セメントと混ざると丈夫な建材になる。
- 相対的に安価。
- 歴史
- アスベスト繊維は織物として成形でき、不燃性で熱を伝えにくいことは古くから知られていた。
- アスベストそのものは、すでに紀元前2世紀(日本-弥生時代中期)から知られていた。
- 1世紀(日本-弥生時代中期)に古代ローマの軍人で博物誌家でもあったプリニウスが著した「博物誌」の中に、初めてアスベストという言葉が使われている。
- ローマ人は、火葬用の布やランプの灯心をアスベストで作り、後にマルコ・ポーロはアスベストを織物にすると便利だと記(しる)している。
- 江戸時代の博物学者、平賀源内が作ったといわれる火浣布(かかんぷ)もアスベスト。
- 日本
- 日本では、アスベストのほとんどは、建材として利用されてきた。
- アスベストに結合材(ふつうセメント)と水を加えて混合し、鉄骨建造物の柱や梁(はり)などに吹き付け施行を行うことで、耐火被覆としていた。空調機械室やボイラー室などでも吸音・耐熱を目的として使用されていたが、1975(昭和50)年に原則使用禁止となった。
- 最も利用が多いのは、建物の外壁や屋根などに使用するスレート。
- 本来のスレートは天然の粘板岩のことだが、高価なことから代替品としてセメントにアスベストやパルプを加えて板状に成形したものを石綿スレートという。
- 不燃性や耐水性、耐久性、防音性に優れ、安価なことから日本では屋根材料として広く利用されてきた。
- 害
- アスベストの繊維や粉塵を吸い込むと塵肺(じんぱい)の一種であるアスベスト肺という肺疾患に15〜20年の潜伏期間を経てかかる。
- また、肺癌では15〜40年、胸膜や腹膜に手術不能の癌である悪性中皮腫では20〜50年の潜伏期間を経て発症することが知られている。
- なかでも悪性中皮種は、アスベストとの関係が深いといわれている。
- 近年ではアスベストの使用の見直しが検討されるようになり、ノンアスベスト製品の開発が進められている。
- 屋根材や内装材など建築資材では、アスベスト代替建材が販売されている。
- 1980年代(昭和55-)に入ってヨーロッパ諸国が、有害なアスベストの使用を法律で禁止した。
- 1986(昭和61)年には、ILO(国際労働機関)がアスベストによる健康被害から労働者を守るための「石綿条約」を総会で採択した。
- アメリカでも主要なアスベストの使用廃止とすべてのアスベスト製品の製造を全面的に禁止した。
- 1995(平成7)年、阪神・淡路大震災によって倒壊した建造物からアスベストが飛散し、防護マスクの支援が行われた。
- 2005(平成17)年、大手機械メーカーのクボタが、旧神崎工場(兵庫県尼崎市(あまがさきし))で勤務していた労働者や、その家族や工場周辺の住民にも悪性中皮腫による死亡が工場で使っていたアスベストが原因であったことを認め、社会的な関心が高まった。
- アスベストによる健康被害が、アスベストを製造する工場や鉱山で働く労働者だけはなく、その家族や工場周辺に住む一般住民にも広がっていることは、すでに1960年代(昭和35-)から海外では報告があがっていた。
- こうした事実を、当時の労働省(現、厚生労働省)や環境庁(現、環境省)も把握していたことが判明し、日本での対策の遅れが問題となった。
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関連HP |
社団法人日本石綿協会 |
厚生労働省
・・・アスベスト(石綿)についてQ&A |
2011.05.04 |
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