鮭・鱒 さけ・ます
  • 硬骨魚綱サケ目サケ科の魚。
  • 店などでサケやマス類を買うときに迷うことはないと思うが、いざ、これを学術的に定義するとなると、どうやら非常に難しい魚の種類らしい。
  • 北半球の中・高緯度地方に広く分布し、食用や釣りの対象としてどこでも重視される存在となっている。
  • 教科書英語では、salmonをサケ、troutをマスと機械的に翻訳する習慣になっているが、これは日本語のサケやマスの本来の意味を取り違えている。
    • そのために混乱が起こり、日本語で書かれた学術文献などとの間に整合性がとれない。
  • サケ科には3つの亜科
    • 日本にはサケ科の3つの亜科の内の一つであるサケ亜科の魚しか自然分布していない。
    • サケ亜科Salmoninaeの魚たちは、川や湖、海のどこでも生息できるゼネラリストだが、卵には塩分耐性がないので繁殖だけはかならず淡水域でおこなう。
  • 狭義のサケマス類
    • サケ亜科:2つの血縁集団に分けられる。
      • 血縁集団1
        • イワナ属Salvelinus
          • 10種以下だが、最終的な結論は得られていない。
      • 血縁集団2
        • イトウ属 Hucho
          • イワナ属以外のサケ亜科の魚の中で、先祖の形質をもっとも濃厚にひきついでいると考えられる。
          • イトウ属の種は、大規模な河川の上流部を中心に生息し、淡水域で一生をすごすのがふつう。
          • 極端に長寿で、最初の成熟までに4〜8年を要する。
          • 繁殖後も死亡することはなく、何年にもわたって繁殖をくりかえす。
          • 日本海とその周辺海域に流入する河川に分布するイトウHucho perryiという種は、イトウ属としてはめずらしく汽水域や沿岸海域にも回遊する。
        • タイセイヨウマス属 Salmo
          • 大西洋沿岸に分布する
          • 1種であるブラウントラウトSalmo truttaはほとんど海にくだらず、ユーラシア大陸の西半分の川や湖沼を中心に分布する。
            • 英語のtroutは本来はこのブラウントラウトを意味し、アメリカ英語のtroutの概念もこの種の生活を念頭においてつくられたものである。
          • のこる1種がタイセイヨウマスS. salarであり、英語のsalmonの語源となった種でもある。
          • なお、タイセイヨウマス属Salmoの魚もかなり長寿で、一生の間に何度も繁殖に参加する。
          • タイセイヨウマスは、海と川との間を何度も往復しながら繁殖と成長をつづけ、サケマスの中では体がもっとも大きくなる。
        • サケ属 Oncorhynchus
          • 太平洋のサケ属は、われわれにとってはもっともなじみの深いサケマスである。
          • サケ属を構成する7種のうちの3種、つまりサクラマスOncorhynchus masouとニジマスO. mykissとベニマスO. nerkaは、川と湖の間を往復しながら一生をすごす湖沼型の個体群を形成する。
          • また、サクラマスとニジマスは、川で一生をすごす河川型の個体群も形成する。
          • しかし、これら3種も分布域北部では全個体が海にくだるし、残りの4種は全生息域ですべての個体が海にくだる。
          • つまり、サケ属の魚は、気候などの条件がゆるすかぎりは、積極的に海にくだろうとする傾向が強い。
          • 海にくだったサケ属の魚は、一般に太平洋のかなり沖合まで回遊する。
  • 母川回帰
    • 成長期を海や汽水域ですごしたサケマスも、繁殖期が近づけば川にもどる。
    • その際に、自分が出発した元の川にもどる母川回帰という習性がみられる。
  • 帰巣習性
    • ベニマスOncorhynchus nerkaについては、自分が出発した水系の中の自分が生まれた場所まで正確に回帰、記憶していることが実験的にたしかめられている。
    • また、日本のサケも、自分が飼育されていた孵化(ふか)場の中まで、水路をつたってもどる。
  • 生理学的な背景
    • この特異な帰巣習性の生理学的背景については、水系や水域の選択には川の水のにおいが利用されることなどが明らかにされている。
    • サツキマスO.masou macrostomusやアメマスSalvelinus leucomaenisの場合には、内湾や沿岸から遠くはなれることはないようなので、川のにおいだけでも元の川にもどることができるかもしれない。
    • しかし、その他の種の場合には、外洋を数千キロメートルにもわたって回遊するので、全区間にわたって川の水のにおいを追跡できる可能性はまずない。したがって、外洋域では別の目印を利用しているものと思われるが、その鍵となる要因はまだ特定されるにはいたっていないようである。
  • 遡上のタイミング
    • そのほかの興味深い行動習性としては、海から川にもどるタイミングの調整がある。川にもどるのがおそすぎると、生殖腺が肥大しすぎて、とくにメスの遡上(そじょう)行動に支障があらわれる。逆に、はやすぎれば、産卵場に到達してから生殖腺が完熟するまで待機するしかない。それでは、海での摂餌(せつじ)期間を切りつめたことがむだになるし、捕食者に襲われる危険も増える。
    • このような支障やむだをさけるためには、産卵場までの遡上に必要な期間をみこして、産卵場に到着するころに卵や精子も完熟するようなタイミングで川にはいることがのぞましい。
  • イクラとスジコ
    • たとえば、日本の小規模な川で繁殖するサケは、河口から数キロメートルも遡上すれば産卵場に着くのがふつうだから、卵がほぼ完熟してイクラの状態になってから川にもどる。これに対して、石狩川のような比較的大規模な水系の本流で繁殖するサケは、河口から数十キロあるいはそれ以上の距離を遡上しなければならず、卵がスジコの段階で川にもどる。
  • 食材としての利用
      • 欧米ではタイセイヨウマスやマスノスケ、ベニマスなど、身の色が赤くて香りの強い種が食用として高く評価され、ムニエルやフライ、燻製(くんせい)などで消費される。
        • これに対して、カラフトマスのように身の白い淡泊な食味の種は、缶詰に加工してサラダなどにまぜられる程度であり、サケなどはかつては犬の餌にされていたためにdog salmonの名がついたという。
      • これに対して日本では、もともとサケやカラフトマス、サクラマスなど、身が桃色に近くて香りも淡泊な種の漁獲量が大きかった。
        • そのためか、加工法も塩焼きや鍋料理、塩蔵加工などが中心になり、食用油や香草でにおいを制御するような伝統はない。
        • おそらくこれらのことがからみあって、かつてはマスノスケやベニマスなどがとくに高く評価されることはなく、これらの種はおもに輸出にむけられていた。
      • しかし、最近は日本人の食生活全体が欧米風に変化したために、むしろ香りの強い種のほうが評価が高くなり、かつては大量にでまわっていたカラフトマスの塩蔵品(シオマス)などは、めったにみかけなくなりつつある。
      • サケマスの仲間を調理する場合には、早めに下ごしらえをすませて多めに塩をまぶし、ざるなどにのせて、すずしい場所に数時間おき、水分をとりのぞくのがコツである。
        • また、たとえ同じ種でも、漁獲される場所や時期、漁獲法、漁獲後の処理法などによって食味は大きくことなるので、確実においしいサケマスを食べたければ、専門的な知識をもつ店で入手することである。
  • サケとマスの再定義と分類
    • salmonをサケ、troutをマスと機械的に翻訳する慣例が多くの混乱をまねいているので、最後にもう一度整理する。
      • サーモン
        • サーモンsalmonは荒巻サケなどでなじみの深いOncorhynchus ketaという種だけをさすのに対して、トラウトtroutは海や湖で成長期をすごすサケ以外のサケ属の魚とイワナSalvelinus属の魚をさす。
        • したがって、日本語の原意を尊重するならば、salmonをサケと訳すことが可能なのは、O. ketaという特定の種を意味する米語のdog(またはchum) salmonの場合だけである。
        • その他のサケ属の種に対してつかわれている米語のsalmonは、すべてマスと訳さなければならない。
        • また、大西洋産のサーモンAtlantic salmon(Salmo salar)も、どちらかといえばサケではなくマスと訳すべきである。
        • 一方、salmonという言葉は海にくだるサケやマス類の総称としてもつかわれるが、その場合には「降海型のサケマス」あるいは「降海型のマス類」などと訳すべきなのである。
      • トラウト
        • トラウトtroutの訳語についても簡単にふれると、成長期を湖沼ですごすtroutはマスとよぶことができるが、降海型のマスと区別するためには「湖沼型のマス」とよぶほうが適切である。
        • 一方、幼魚の姿のままで一生をすごす河川型のtroutに対してはマスという言葉はつかえないが、こまったことに、それにかわるべき適当な訳語は日本語には存在しない。
        • したがって、無理に翻訳語をつくれば、「河川型のサケ亜科魚類」や「河川型のサケ属魚類」といった学術用語交じりの表現にならざるをえないだろう。
      • チャー
        • 米語ではイワナ属の魚名にもtroutという言葉を使用していたが、最近はそれをチャー(英語ではcharr:赤い魚の意)に変更すべきだとの意見が強くなっている。
          • 日本語のマスはイワナ属の魚にもつかえるので、たとえば従来のbrook troutがbrook charrにかわったとしても、それが湖沼型であれば訳語はカワマスのままでかまわないし、河川型のほうだけはカワイワナと訳すことになる。
          • ただし、charrをマスと訳したりイワナと訳したりすることは面倒であり、またbrookを川と訳すこともあまり適当とはいえない。
          • そこで、本項では、外国産のイワナ属の魚についてはブルックチャー、レークチャーなどと原音でよぶことにした。
  • 鮭料理
    • 焼き鮭
    • 鮭フライ
    • 鮭のムニエル
    • ちゃんちゃん焼き
    • 石狩鍋
    • 三平汁
    • スモークサーモン
    • サーモン丼
    • 寿司
関連
関連HP
市場魚貝図鑑
・・・サケ
WEB魚図鑑
・・・サケ
鮭いろは
鮭.jp (越後村上うおや)(新潟県村上市)
佐藤水産(北海道札幌市西区)
・・・北海道「鮭物語」
■サーモン丼


2011.11.06
2011.06.03

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