自衛隊官舎ビラ配り有罪判決の記事 |
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2008.04.24 |
- 「有罪判決に疑問」
- 法学者148人が声明
- 自衛隊官舎ビラ配り
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- 全国の法学者148人が「商業ビラ配布と何ら異なるところがない3人の行為を有罪とした判決に強い疑問を抱かざるを得ない」と、最高裁判決を批判する声明を出した。
- 「個々の住民意思には一切触れていない。平穏をどの程度侵害したか検証も全くされていない」と指摘。
- 「商業ビラの配布が日常的に行われていた実態において、管理者(自衛隊)は部外者の立ち入りを広く容認していた」と3人だけが刑罰の対象になったことを批判した。
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朝日新聞 |
2008.04.15 |
- 国家が「平穏」守る危うさ
- ビラ配布有罪
- 奥平東京大学名誉教授 私の視点
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- このところ、日教組の集会会場の予約が取り消されたり、映画「靖国」の上映が取りやめになったりするなど、「いやな時代」の到来を予告する風潮が強まってきている。
- 集合住宅で政治的なビラを配って住居侵入罪で逮捕されるなどという事件は、戦後はありえなかったことだが、最近は増えている。
- これまでほとんど使われなかった罪が、表現の自由を制約する道具にされている。
- 判例のお墨付きを得て、今後、捜査当局が様々な活動に捜査の網を広げる結果となれば、地域の民主主義を支える議員のビラ配りなど政治活動や、ボランティアなど様々な活動を萎縮させてしまいかねない。
- ビラ配布を厳しく取り締まる底流には、「公共の福祉」「治安の維持」「住民のプライバシー」を重視すべきだという考え方がある。
- プライバシーを守るなどの名目で、「公共の安全」という概念が根を張ってきたともいえる。
- 市民にとって、ビラ配布は、自己の見解を伝える手段として重要。
- ビラを読みたくない人は捨てればよいだけのことだ。
- それを一括して住居侵入罪で取り締まるのでは、言論の自由は保障されない。
- 国家が至るところで個人の生活の中に入り込んで、「治安のため」と言わずに「国民の権利を守るため」というやり方には注意が必要だ。
- 市民がプライバシーを守る手段を国家に委ね、平穏で小さな自分だけの世界に閉じこもって生きてゆくことを「自由」だと考えてしまうことも問題。
- 基本的な自由という基盤がない社会は、非常に危うい。
- 「プライバシー」がもてはやされる中、国家が枠をはめた個人の自由に安住する「庶民感覚」では、国家にとって都合がよい管理社会の方向に流されてしまうのではないか。
- 日頃から政策ビラを戸別配布している全国の政治家やその支持者は、今回の判決で大きな戸惑いを受けているはず。
- 民主主義が、地域という最前線から後退してしまうことを恐れる。
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2008.04.12 |
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- 自衛隊員の官舎に「イラク派兵反対」のビラを配った立川市の市民団体の3人(50,34,34)に、最高裁判所は住居侵入罪で有罪判決を言い渡した二審の東京高等裁判判決を支持する判決を言い渡した。
- 高裁の逆転有罪判決から2年余り。
- 3人は「表現の自由が失われる」とビラ配りの正当性を訴えてきた。
- 有罪が確定した市民団体「立川自衛隊監視テント村」の3人はそろって記者会見に臨んだ。
- 「反戦運動の表現の手段の一つが奪われた」
- 「日常的なビラ配りが犯罪になる。市民の常識からは考えられない。最初から政治弾圧ありきの事件だ」
- ビラは自衛隊の「イラク派兵反対」を呼びかける内容だった。
- イラクへ赴くのに不安を覚える自衛官もいるだろうと2003年(平成15)10月から逮捕される翌年2月まで計五回、官舎のドアポストに入れた。
- 自衛隊はその間、関係者以外が敷地内に立ち入ることやビラ配りなどの禁止事項を官舎出入り口に掲示。
- 同時に許可なく官舎に入ったとして警察に被害届を提出した。
- 最高裁は、こうした自衛隊の一連の動きがあったにもかかわらず、ビラ配りを続けたことが「私生活の平穏を侵害する」と認定したが、3人には事前警告や被害届が出されていた事実は知らされていなかったという。
- 「テント村」が官舎にビラを入れ始めたのは32年前。
- 「今まで当たり前のようにやってきたことが、ある日突然、犯罪にさせられた。表現の手段が奪われれば、表現そのものが奪われたに等しい」と被告。
- 3人は他の市民運動への影響についても心配する。
- 葛飾区のマンションで共産党のビラを配ったとして住居侵入罪で起訴された男性(60)が現在、最高裁で争っている。
- 「自分たちの事件以降、反戦グループの中には活動を控えている団体もある。今後は不当判決への抗議活動をしながら、他のビラまき裁判の支援をしたい」。
- 関連HP→立川・反戦ビラ弾圧救援会
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- ビラ配り有罪確定へ
- 最高裁上告棄却 表現の手段 処罰
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- しゃくし定規な判決
- 「表現の自由」に詳しい右崎(うざき)獨協大学法科大学院教授(憲法)
- 判決からは多くの人がプライバシーを大事にしている時代への配慮はうかがえる。
- しかし「管理権の侵害」とか「私生活の平穏の侵害」といった理由だけで、「表現の自由」の正当な行使を制限するのは、ややしゃくし定規だ。
- 「正当な理由なく」住居に立ち入った場合に適用されるのが住居侵入罪だ。
- イラクの自衛隊派遣という政治問題を提起する内容のビラを配ることは当時、「正当な理由があった」とみることもできる。
- 市民活動 萎縮する恐れ
- 解説
- 官舎内のビラ配りを最高裁が有罪としたのは、立ち入りを禁じる表示や管理者からの被害届など「拒む意思」を重視した結果。
- この判決により他人の敷地内でのビラ配りがすべての刑罰の対象になるわけではないが、結果的に市民に過剰な萎縮効果をもたらす懸念は決して小さくない。
- 一審判決は、政治ビラについて、商業ビラよりも表現の自由が保障されていると明言した。
- だが、最高裁はこうした区別をしなかった。
- ビラの表現の中身を取り締まるのではなく、管理者の意思に明確に反した行為に対して刑罰を科す、という論理だ。
- しかし、ビラ配りという一つの表現方法が規制されてしまうと、民主主義にとって大事な主張が伝達できなくなる事態になりかねない。
- 今回の判決は、どこから刑事罰の対象になるのかもはっきりしない。
- 被害届が出ているかどうかは、ビラを配っている側には分からない。
- 被害届の中から、捜査当局がビラの中身を選んで逮捕、起訴することも可能だ。
- 現実に立川事件の後、東京都葛飾区でマンションの共用部分に立ち入って共産党のビラを配った男性も同じ罪で起訴された。
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