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国立公園 |
こくりつこうえん
National Park |
- すぐれた自然景観やそこにすむ動植物、そこにある史跡などを保護するとともに、その地を訪れる人々に豊かな自然と接する喜びを与えることを目的として、国によって特別に指定された区域。
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- 世界
- 16〜18世紀、(日本-戦国〜江戸時代中期)ヨーロッパの都市などで、国王や貴族が所有する狩場(パーク)、庭園の一部が公共に開放され、いわゆる公園となっており、貴族らの中には農村部の狩場や私有地の自然環境保護に努めている者もいた。
- しかし、人口がわずかで自然が豊かな、開発が進んでいない地域に関しては、特別に保護を要するとは考えられていなかった。
- 都市から離れた土地の自然を保護するため、国立公園や自然保護区を設けるという発想は、19世紀初頭(日本-江戸時代後期)の西ヨーロッパやアメリカにおいて、工業化による大規模な自然環境の損傷、破壊に対応するために生まれた。
- 1832年(日本-江戸時代後期)、アメリカの画家ジョージ・キャットリンは、自作の風景画の題材となった西部の未開地を保護するよう提唱。
- 1835年、イギリスでも詩人ワーズワースが故郷の湖水地方(レークディストリクト)について書いた書物の中で、美しい自然を「ある種の国有財産」にすることを提案している。
- 世界最初の国立公園
- 1872(明治5)年、アメリカのモンタナ、ワイオミング、アイダホ各州にまたがるイエローストーン国立公園が連邦議会の指定を受けた。
- 1880(明治13-)年代、国立公園という概念がニュージーランドやカナダにも伝わり、これら4カ国でさらにいくつかの地域が国立公園に指定された。
- 1909(明治42)年、ヨーロッパ初の国立公園がスウェーデンに設置された。
- 1930(昭和5-)年代には日本、メキシコ、旧ソ連、複数のイギリス植民地に、1950(昭和25-)年代にはイギリス、フランス、その他のヨーロッパ諸国にも生まれた。
- その後、インド、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドを中心に、多数の国立公園およびそれに準じた地域が設けられた。
- 今日、「国立公園」という言葉は、自然保護のために設けられた小さな区域についても使われ、これらの指定地域では保護基準がさほど厳格でない場合も多い。
- スコットランド、アイルランドの森林公園、アメリカ国立公園局の運営する国立野生保護区、国立記念物、カナダ、アメリカ、オーストラリアの州立公園などがこれに該当する。
- 現在
- 自然の景観保護や国民の保養といった当初の設置目的に加え、絶滅の危機に瀕(ひん)した動植物を守り学術的研究を促進するためにも、多くの国立公園が指定されている。
- これらは「自然保護区」とみなされるもので、動物、植物、あるいは生態系全体が保護、研究の対象である。
- 狩猟など生態系に悪影響を与える行為は制限もしくは禁止され、一般人の立ち入りも厳しく制限され、まったく許可されないことも少なくない。
- 国立公園は国あるいは州政府が所有、運営することが多いが、イギリスでは民間の寄付からなるナショナル・トラストが1895(明治28)年に誕生した。
- 自然保護区については、イギリスの自然保護区、アメリカの国立海岸公園、国立保護区などのように行政府が運営にあたるものもあるが、多くはナショナル・トラスト、動物保護団体のように、非営利の民間組織が運営している。
- 国立公園の2つのタイプ
- 「造営物の公園」
- 公園地域の大部分を国有地が占め、国が完璧(かんぺき)な管理および統制を行うタイプ。
- アメリカ、カナダなど広大な土地を有する国々にみられる形態で、理想的な自然公園といえる。
- 「地域制の公園」
- 土地所有に関係なく法的に公園地域を設定し、その土地上で行われる行為を規制するタイプ。
- 古くから国土開発が行われ、人口密度も高いイギリスや日本などにみられる形態で、比較的、公園の指定は容易であるが、公園内に居住する住民や産業活動との共存が大きな課題となっている。
- 国立公園の問題点
- 多くの国立公園で自然保護とレクリエーションの両立が問題となっている。
- 人々が大勢訪れることにより、たとえ意図しなくとも景観を破壊したり、動植物に悪影響を与えてしまう。
- そのため、区域内の一部を閉鎖したり、入場者数を制限することで、こうした問題を回避しようとすることも多い。
- 歩行や自動車の乗り入れを特定の道路に制限したり、インドの国立公園のように入場にあたって係員の同行を義務づけたりすることも行われている。
- 美しい自然、文化的遺産、学術的価値などを有する土地の保護は、発展途上国にとってはとくにやっかいな問題となっている。
- 先進諸国と異なり、これらの国々にとって開発を抑制することによる経済的損失は大きく、またそのような政策には国民の支持も集まりにくいという事情もある。
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- 日本
- 日本において国立公園誕生のきっかけとなったのは、富士山一帯を国立公園にしようとする運動からだった。
- 1911年(明治44)、この案が帝国議会に「国設大公園設置ニ関スル建議案」として提出された。
- 1934(昭和9)年、瀬戸内海、雲仙、霧島の3国立公園が日本で初めて指定される。
- 最新の法律における国立公園は、1957(昭和32)年に制定された自然公園法に定める3種の自然公園のひとつで環境大臣が指定したもの。
- 各国立公園には環境省よりレンジャーと呼ばれる公園管理官が配置され、また、多くの民間組織が管理業務に協力している。
- 他の自然公園は、都道府県知事が申請し環境大臣が指定し、都道府県が管理する国定公園と都道府県知事が指定する都道府県立自然公園。
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関連HP |
国立公園(環境省自然環境局) |
財団法人国立公園協会 |
National Park Service (USA) |
2011.09.14 |
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